次世代シーケンサーのすゝめ
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NGSデータのファイル形式

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目次

次世代シーケンサー(NGS)は、大量のDNAやRNAを断片化して高速に解析できる技術です。一方で、NGS解析によって得られるデータ量は膨大であり、そのままでは保存や管理が難しくなることがあります。

そのためNGSデータは、用途に応じてさまざまなファイル形式に変換し、使い分けて扱われています。

代表的なファイル形式

生命科学データの情報解析を行う「バイオインフォマティクス」では、様々な解析ツールを用いて、DNAやRNAといった塩基配列やそれらの品質情報も含めた大量データを扱うため、それぞれの解析ツールに合った適切なファイル形式を選択する必要があります。遺伝子解析やゲノム解析で利用される代表的なファイル形式を見ていきましょう。

FASTA形式

FASTA形式は、ゲノム解析や遺伝子研究の分野で広く使われている代表的なファイル形式で、1970年代から利用されています。

FASTA形式のデータには、例えば「AATGCCTAA」のようなDNAやRNAの塩基配列や、「PAPSWPLSSKT」のようなアミノ酸配列など、配列そのものの情報が記録されます。

テキスト形式で記述されるため人間にも読み取りやすく、ゲノム情報やタンパク質情報のデータベース構築などに利用されます。一方で、データ量が大きくなりやすく、シーケンス品質に関する情報(クオリティスコア:Qスコア)は含まれていません。

なお、複数の配列を1つのファイルにまとめたものは「multi-FASTA形式」とも呼ばれます。

FASTQ形式

FASTA形式に品質情報(クオリティスコア:Qスコア)を加えたファイル形式が「FASTQ形式」です。

塩基やアミノ酸の配列データに加えて、シーケンスの品質情報も含まれており、FASTA形式に次世代シーケンサーで読み取った断片(リード)の配列データを記録するために使われます。

次世代シーケンサーでは、Qスコアが高いほど読み取りの精度が高いと考えられるため、FASTQ形式はNGSデータを実際に扱ううえで重要な形式です。そのため、QC(品質管理)やトリミングなどの前処理でもFASTQ形式が扱われます。

【ポイント】
クオリティスコアと
シーケンシングエラー率の関係

FASTQ形式におけるクオリティスコア(Q)と、読み取りの誤りの確率(シーケンシングエラー率:E)は、以下のような数式で表されます。

Q = -10log10(E)

この関係から、「Q(品質)」の値が高いほど、「E(エラー率)」は低くなることがわかります。例えば「Q=10」の場合、エラー率は「E=0.1(10%)」となり、読み取りの精度はおよそ90%と考えられます。

SRA形式

SRA形式の「SRA」は「Sequence Read Archive」の略で、次世代シーケンサーで得られた生データを保存、公開するためにアメリカの「米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)」が管理する国際的なデータベースです。

SRAは、日本のDNAデータバンク(DDBJ)のDRAや、欧州EBIのENAと連携しており、これらの公共データベースでは共通形式でデータの保存・配布が行われています。

シーケンスデータを効率よく格納するため、FASTQ形式のように「A,T,G,C」といった文字で表現するテキスト形式ではなく、圧縮されたバイナリ形式で記録される点が特徴です。

参照元:国立遺伝学研究所|Sequence Read Archive - DDBJ(https://www.ddbj.nig.ac.jp/dra/index.html)

NGS活用における
用途別ファイル形式

公共のデータベース(DB)からゲノム情報をダウンロードする際には、SRA形式のデータが提供されることが一般的です。これらのデータは解析の際にFASTQ形式へ変換して利用されますが、FASTQ形式はデータ量が大きくなりやすいため、保存や処理の負荷が高くなる傾向があります。

そのため、実際の研究現場ではNGSデータの用途や解析工程に応じて、複数のファイル形式が使い分けられています。

SAM/BAM

実際のゲノム解析では、「SAM/BAM」と呼ばれるデータ形式が使われます。

SAM/BAMは、NGSによって読み取ったシーケンスリードを、リファレンスゲノム(リファレンス配列)にマッピングした結果を記録する形式です。

なお、SAMとBAMは同じ情報を持ちますが、SAMはテキスト形式、BAMはそれを圧縮したバイナリ形式という違いがあります。実際の解析では、データ容量や処理速度の観点からBAM形式が使われることが多いです。

リファレンスゲノムは
生物種を代表する基準配列

リファレンスゲノムは、特定の生物種の標準的なゲノム配列をまとめたもので、解析の基準となる配列です。

NGSで得られた塩基配列(シーケンスリード)は、このリファレンスゲノムに基づいて配列(アライメント)されることで、どの位置に由来するかがわかります。

そしてリファレンスゲノムに沿ってシーケンスリードをアライメントした結果が、SAM/BAM形式として記録されます。

BAM形式は
NGSデータの標準的ファイル形式

SAMやBAMは、シーケンスリードをリファレンスゲノムにマッピングした結果を保存するデータ形式であり、特にBAMはNGS解析で広く使われているファイル形式です。

また、BAMにはデータへのアクセスを高速化するためのインデックスとしてBAIファイルが付随します。

なお、BAMよりもさらに圧縮率の高いバイナリ形式として「CRAM」も利用されています。

VCF/BCF

VCF/BCFは、対象となるゲノムの変異情報を保存するファイル形式です。

リファレンスゲノムに基づいてシーケンスリードをアライメントした結果はSAM/BAMとして保存されますが、実際に得られた配列データと基準となるリファレンスゲノムを比較すると、塩基の置き換わりや欠損など、さまざまな「変異(Variant)」が見つかることがあります。

VCFは、このような変異検出(Variant call)の結果を記録する形式であり、「Variant Call Format」の頭文字に由来します。

なお、VCFはテキスト形式で、それをバイナリ形式にしたものがBCFです。

GFF/GTF

SAM/BAMやVCF/BCFは、NGSデータの解析で広く使われる基本的なファイル形式です。一方で、遺伝子研究の分野では「GFF/GTF」といった形式も利用されます。

「GFF」は塩基配列そのものではなく、遺伝子や転写産物などの位置情報を扱う形式であり、リファレンスゲノム上のどの領域にどのような機能があるかを参照する際に用いられます。

例えば、特定の遺伝子がどの位置に存在するかを把握し、その領域の配列や変異とあわせて解析することで、遺伝子の機能や影響を検討することが可能になります。

なお、GFFとGTFはいずれも遺伝子や転写産物の位置情報を扱う形式ですが、記述ルールが異なるため別形式として扱われます。一般に「GFF」は「GFF3(GFF Ver.3)」を指し、GTFはGFF2と互換性のある形式です。

BED形式

ゲノム上の遺伝子情報について、位置情報を示す形式です。

特定の領域を簡潔に記録するシンプルなデータ形式であり、遺伝子の位置や解析対象となる領域を示すために広く利用されます。GFF/GTFと比べて記述項目が少なく、シンプルに領域情報を扱える点が特徴です。

ファイル形式の使い分けでNGSデータの有用性を最大化

次世代シーケンサーはゲノムのDNA配列を大量かつ迅速に読み取ることができますが、特定の研究を行う際に常に膨大なデータを扱うことは非効率的です。そのため実際の研究では、用途や解析対象に応じて適切なファイル形式を使い分けることで、実験の効率や精度を高めています。

ファイル形式を適切に使い分けることは、NGSデータの価値を引き出すうえで重要なポイントと言えるでしょう。

監修
監修者コメント

次世代シーケンサーのワークフローにおいて、多くの方が障壁と感じられるのがデータ解析のプロセスです。かつては専任のバイオインフォマティシャンや高度な知識・技術が必要とされていましたが、現在では一般的な用途であればコマンドラインを必要としないツールも利用できるようになっています。

また、MiSeq i100やNextSeq 1000/2000といった新型のベンチトップシーケンサーでは、装置内に解析ソフトウェアが搭載されており、ファイル形式を意識することなく解析結果を得られるワークフローも提供されています。

ご不明点や詳細については、お気軽にご相談ください。

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